Garmin から『音楽プレイヤー』『タッチ決済』『標高つき地形図』を加えた、「Fenix 5 Plus」が登場。
パルスオキシメーターが話題となりましたが、日本モデルでは搭載が見送られました。
そのため、GPS・トレーニング機能に大幅な変更はないので、ややインパクトに欠け、ライバル機のSuunto 9 が大幅に性能向上したため、悩ましい選択になります。
このエントリーでは、新機能の紹介と、他機種・ライバル機との比較を整理していきます。
モデルと価格
実勢価格 5X Plus 106,000~(前月比:→)
実勢価格 5 Plus 72,000~(前月比:→)
実勢価格 5S Plus 69,000~(前月比:↘)
Fenix 5シリーズから何が変わったのか
主な追加機能は、以下のものです:
SPO2(血中飽和酸素)測定機能
全モデルでメモリ容量の拡大
音楽再生・Touch Pay 機能の搭載
山岳地図の搭載
注目されていた新機能は、SPO2の測定でしたが、日本モデルは見送られたため、実質的な新機能は、音楽再生・TouchPay、山岳地図の搭載となります。
細かいスペックについては、公式サイトを御覧ください(→こちら)
パルスオキシメーター(5X plus:日本モデル未実装)
SPO2(血中飽和酸素濃度)が測れるようになりました。
血中飽和酸素濃度は、高所登山で知られていますが、トレーニング負荷と疲労回復をみるための新しい指標としても注目されています。
心拍数、心拍ストレス、睡眠状態に加え、SPO2が測れるので、単独の時計としては、現時点で最強のトレーニングツールと期待されます。
しかし、日本での医療機器の承認を取る予定がないため、日本語版への実装は未定となっています。
地図の搭載
これまで、最上位モデルの5Xだけに搭載されていた、16GBのメモリが、5S / S / 5X の全てに 搭載され、高度情報とルート情報を持った『フルカラーTOPOマッピング』がプリインストールされました。カタログ上では、「国土地理院地形図」「詳細道路地図」がプリロードされるとしています。
この TOPO(地形図)内蔵によって、高度情報がより正確に補正され、ルート探索もできるようになりました。Edge 1030 から採用された『人気のヒートマップ』に対応し、ルートチョイスの幅も広くなっているようです。
さらに、ClimbPro という新機能では、探索したルートの高低図が表示され、いまどこにいるのかを、リアルタイムで示すことができます。
地形図の内蔵により、スマホのバッテリーを気にしながら、地図をチェックするのが減るかもしれません。
音楽プレイヤー
内蔵メモリの容量拡大の恩恵もあり、BlueTooth 音楽プレイヤーとして、スマホ不要で音楽を再生することができます。
バッテリー持続が最大の 5X Plus であれば、GPS + 音楽再生+光学心拍計 の条件で、最大11時間の再生が可能となっており、ウルトラマラソンにも対応できる長さです。
音楽再生については、先行販売された Garmin ForeAthlete 645 MUSIC と同じなので、別記事にまとめています(→こちら)
Garmin Pay
また、クレジットカードを登録することで、時計によるタッチ決済(NFC決済・非接触型決済)も可能になりました。
現在のところ、対応してるカードは『三菱UFJ VISA デビット』のみであること、コンビニ等へのVISAのタッチ式の導入が遅れていることから、まだ選択肢は限られている状況です。
こちらも、先行販売されている、Garmin ForeAthlete 645 MUSIC と同じなので、別記事にまとめています(→こちら)
ここまで紹介した、パルスオキシメーターを除く「新機能にどれだけの価値を置くか」が決断のポイントになります。
GNSSチップの更新
GPS(米国)、GLONASS(ロシア)、みちびき(日本)につづき、欧州の「Galireo」もサポートされました。
ただし、計測のメインはGPSで、他のGNSSは補助的な利用にとどまります。つまり、みちびきに対応していると言っても、GPSの精度が向上するわけではなく、トラックの乱れが発生しにくくなる程度です。
すでに Fenix 5 の精度は高く、前シリーズから大きく進化した部分はありません。
バッテリーは少し短く:高容量メモリの弊害
一方で、音楽やマップを入れるための大容量メモリが採用された結果、消費電力が大きくなってしまい、すこし持続時間が短くなりました。
音楽やマップ機能を使用しない場合でも、Fenix 5 よりすこし短くなります。
大きなケースをもつ 5X Plus だけはバッテリー容量が拡大されており、高精度GPS+光学式HR の使用で 約30時間、准精度のUltraTrak+光学式HRで最大64時間を誇っています。
ウォッチ間で数値を同期する Physio TrueUp
これまで、複数の時計を使い分けるケースでは、運動時間の合計、カロリー、VO2max、最低心拍数やストレスの値が、それぞれに分散されていたのが、ユーザーの悩みでした。
新機能である、Physio TrueUp により、所有するGARMINデバイス間で、これらの値を共有されるようになりました。
サイクルコンピュータの Edgeシリーズにも対応するため、バイクを使ってる人にも朗報です。
このあたりの機能は 前モデルやFA935でもアップデートされたため、購入の決め手に欠けます。
どれを買うか? 他機種やライバル機との比較
そのため、現時点での選択肢としては、
Fenix 5 Plus
Fenix 5
FA645 Music
Suunto 9 Baro
が候補になります。
FA645 MUSIC との違いは?
いちばん大きな違いは、バッテリーの持続時間、そして重量です。
FA645 MUSIC は、42mm小型ケース採用で 重量は42g。バッテリー持続は、GPS+WristHR+音楽 で 約5時間。
もう一方の fenix は、最小・最軽量の 5S Plus で比較すると、ケースサイズが同じでも、重量は 69g、持続時間は GPS+WristHR+音楽 で 約4時間と、645MUSICよりも、重くて短いです。
腕の細い人、女性だと、47mmモデル(fenix 5 plus)でも大きく、重く感じると思うので、試着してみたいところです。
性能面でも、バイクパワー計への対応があるか無いかぐらいの違いしかないので、アウトドア的なルックスにこだわりがなく、ジョギング~マラソンユーズまでなら、実売価でも数万円安い、645MUSICも検討する価値が十分にあると思います。
ライバル機との比較
同時期に、Suuto から Suunto 9 Baro も発表されました。
Fenix 5 Plus と、Suunto 9 Baro を比べると、両社の違いが分かります。
音楽や地図、人気のヒートマップなど、モチベーションをアップさせる工夫がされており、最新ガジェットを、意欲的に搭載してくるのが ガーミンのコンセプト。
一方、ABCウォッチとしての信頼性・堅牢性を再重視しているのが スントのコンセプト。
今回、Suunto 9 に新搭載された Fused Trackテクノロジーは、UltraTrak並のバッテリー持続にも関わらず、高精細モードと変わらないログを記録できる脅威の機能です。
カタログ上で40時間超となるモードを、UTMB2018 にて比較しました。計測には、Fenix 5/plus と同精度の ForeAthlete935を用いています。
緑:FA935(UltraTrak)
橙:MZ-500(Fine)
紫:Suunto9(Endurance)
細青:オフィシャル交付GPSファイル
Garmin UltraTrakは、山間部で特有の乱れが見られますが、Suunto 9 、Epson MZ-500は精度を保っているのがわかるでしょうか。
Suunto 9 は、光学式心拍をONにした状態で約35時間、この精度測定が行えています。
Suunto 9 Baro については、別記事で紹介しているので、よろしければ比較してみてください。 live-simply.hatenadiary.jp
そのため、ログ精度の高さを求めるのであれば、重量もほぼ同じ、実売価格もほぼ同程度なので、Suunto 9 Baro も候補に上がります。
ただし、Suunto は ANT+未対応なので、これまで Garmin で バイクやセンサーを揃えてきた人には、Fenix 5 または Plus で良いと思います。
前モデル Fenix 5 との比較
2018年10月時点で、Fenix 5X は 97,000円、Fenix 5は 65,000円、Fenix 5 と同じモジュールを持つ軽量モデルの ForeAthlete935 は 53,000円 と、実売価格で1万円以上の開きが見られています。
そのため、音楽再生機能・TouchPay が不要なら、わずかにバッテリ消費が少なくてすむ、前モデル・Fenix 5 シリーズや、FA935 も、検討の価値があります。
疑問点
GPSが不安定で乱れる・センサーが切れる
初期出荷のファームウェア(Ver.3.1.0)は、GNSS精度の乱れ、ANT+センサーの接続不良の報告があります。
v 4.20(2018/09/19) で大幅に改善したので、PCに接続してアップデートを試してみて下さい。
パルスオキシメーターは日本モデルに搭載される?
日本モデルのガイドブックには、本機能は記載されていないため、メーカーに確認しました。
やはり、医療機器に該当するため、現時点では実装する予定はない、との回答をいただきました。
Apple Watch の 心電計問題と同じく、医療機器の承認クリアーは大きなハードルです。
世界の地形図は入ってる?
入ってません。以前より、Garmin の場合、エリアごとに地図を購入するスタイルになっています。
そのため、並行輸入モデルを購入する際には、どこのエリアの地図がプリインストールされているか?を確認する必要があります。
サイズや重量は?
モデルによって異なります。
5Sがもっとも小型となり、ケースサイズは ForeAthlete 645/MUSIC と同じ、42.5mm で 69g
5は、ForeAthlete 935 等と同じ 47mmで、チタンモデル76g~通常モデル87g
5Xはかなり大きく、51ミリとなり、重量も88~96gと、腕が細い人は試着がベスト。腕へのフィットは、光学式HRの精度に大きく影響するので、光学式のメイン使用を考えてる人は、要注意ポイントです。
以下、ForeAthlete 935 の装着の様子です(無印5と同サイズの47mm)
外部センサーのデータ欠落は改善したのか
Fenix 5 において、心拍ベルトやPod類のデータが、ときどき欠落するという現象がありました。
5Plus では、内部のレイアウトが見直され、GNSSを含め、アンテナの位置が改善されています。
そのため、欠落はだいぶ減ったようですが、Plus でも 欠落することがある、という報告が、Forumなどで見られます。
例えば、時計をザックにつけている、時計を左 / Pod を右足 に装着している場合など、センサーが対角線で隠れるタイミングがある、といったケースが共通するようです。
なので、データの欠落が目立つようでしたら、ファームウェアをアップデートの上で、装着位置も見直してみてください。
なお、この現象は、同一の基盤を使用してるにもかかわらず、樹脂ボディーを採用しているForeAthlete 935 では見られないため、ベゼルやケースに使われている金属が、受信感度に影響を与えているのではないか、と言われています。
どうしてもデータ欠落が困る、というのであれば、ボディーが軽めで、実売価格も安めの ForeAthlete 935 も 検討する価値があります。外装が軽量化されただけで、使用時間も同じ、使えるセンサー等もまったく同じです。
並行輸入のメリット・デメリットは
以下の理由で、おすすめしません。
ハードウェア・ソフトウェアが国内モデルと異なる可能性がある
日本代理店でのサポートが受けられない (販売元・US本社で行う必要→こちら)
プリインストール地図が、日本のものではない
ただ、パルスオキシメーター機能をどうしても使ってみたい!という場合、リスクを承知のうえで、チャレンジするのも面白いと思います。
Fenix 5 ユーザは買い換える必要なし?
「Plus」された、地図や音楽機能、NFC決済が必要かどうか?です。基本的なスポーツモードや、設定画面に変更はありません。
パルスオキシも搭載の予定がないようなので、5Xの魅力は、バッテリー持続の長さだけになっています。
「できるだけ最新型がいいな、、、」 と 「少しでも安いほうが助かる・・・」
の葛藤だと思います。
ただ、どちらの選択をするにしても、とても完成度が高く、満足できることは間違いありません。
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