レース直前になると、あれこれ迷いがちな一つに、「カフェイン断ち」があります。
当日の効果を高めると言われる一方、やらなくても変わらないという報告もあり、あまり神経質になる必要はなさそうです。
ですが、「カフェインがないと日常生活が送れない」ような状況なら、レース前にいったん抜いて、疲労の状況を確認しておくのがベターだと思います。
カフェインの効果
カフェインには、エンデュランス競技でのパフォーマンスを向上させ、疲労への耐性を高める効果があります。
適正な量は、体重あたり 3~6mg/kg の範囲(体重50kg なら 150~300mg)で、これより多すぎても少なすぎても効果は低下。4~6時間で体内量は半減。
ふだんのトレーニングから使用し、トレーニング強度に集中するとともに、最適量を探しておく。7日前から控えることで、さらに効果的とされています。
Effect of Caffeine on Sport-Specific Endurance Performance: A Systematic Review
カフェイン断ちへの期待
上記のレビューにより「7日前からのカフェイン断ち」が知られるようになりましたが、「断たなくても当日のパフォーマンスは変わらない」という研究もあるので、結論はでていません。
一種の願掛けである、「◯◯断ち」のような心理効果も大きそうなので、当日のパフォーマンスに影響してない人は、あまり気にせず普段どおりでいいと思われます。
ですが、
コーヒーを飲まないと仕事ができない
カフェインを入れないとトレーニングに集中できない
こんな状況なら、『カフェインで隠している疲労』を確認する価値はあります。
日常の労働もそうですが、エンデュランスにおけるカフェインの効果は『疲労を感じなくさせる効果』が大きく、とくにハイボリュームになりがちなウルトラトレイルの練習で日常的に使っていた場合、驚くほど疲労が蓄積していることがあります。
当日まで隠しつづけたとしても、見えない疲労は、結果に大きく影響してきます。
カフェインを抜くことで、疲労や倦怠感を強く感じ、生活に支障がでるようなら、リカバリーに振っていくチャンスと捉えましょう。
カフェインの楽な抜き方
カフェイン抜きの期間は2〜3日から2週間以上と、諸説ありますが、目標レースのテーパリング開始と同時、つまり約2週間ぐらい前から行うのが楽でしょう。
依存度にもよりますが、段階的に抜く必要があるので、コーヒー漬けのぼくの場合、だいたい10日はかかってます。
ポイントは、デカフェのコーヒーとカフェインの錠剤を使い、カフェイン量を正確に把握するところ。
1日400mgぐらいのカフェインを飲んでるぼくは(スタバのベンチドリップを毎日のようなものです)、段階的に、半々に減らしてます:
曜日 | コーヒー | カフェイン |
---|---|---|
月 | デカフェ | 2*100mg |
火 | デカフェ | 2*100mg |
水 | デカフェ | 2*100mg |
木 | デカフェ | 100mg |
金 | デカフェ | 100mg |
土 | デカフェ | 100mg |
日 | デカフェ | 100mg |
で、翌週はデカフェのコーヒーだけ。
これだと不快な頭痛はまず起きませんが、『こんなんで当日に間に合うんだろうか?』というぐらい、びっくりするほど身体の芯から疲労が溜まってたことがありました。
<段階的に減らす理由>
カフェイン漬けの人が断つと、だいたい1〜2日で非常に不快な頭痛がきます。
ひどいと鳥肌が立ち、どんな痛み止めも効果なく、カフェインを入れるとすぐに取れる。なので、いきなりのカフェイン断ちはだいたい失敗し、だらだらしたままレース当日になりがち。
なので、カフェインは徐々に減らすのがベターです。1日に何杯もコーヒーやエナジードリンクを飲む方は参考にしてください。
ちなみに、デカフェのコーヒーは、瀬戸焼コーヒーさんのは、デカフェとは思えない美味しさで、物足りなさがありません。
モカ好きなら、このシダモG2は試してみてほしい。
カフェインの錠剤は、1錠が100mgが使いやすい。レースの携帯でも割れにくいハードコート錠がおすすめ。
「こんなことしなくても普通にやめられ、生活に影響もない」って方はカフェインの影響が少ないので、いままで通りで大丈夫です。
ウルトラトレイル完走におけるカフェイン戦略
カフェインの特性は、
- 疲労を隠す働きがある
- 3~6mg/kg(体重50kg なら 150~300mg)が適正
- 6時間で体内カフェインは半減
でしたから、
①レース前にはテーパリングでしっかり疲労を抜いておき、②疲れを感じたらしっかり適正量(体重50kgあたり200mg程度を目安)を使い、③半分になる約6時間ごとに100mgを追加する というのが安全な運用になります。
一方で、9mg/kg(体重50kgで 一度に450mg以上) を超えてもパフォーマンスへの恩恵はなく、有害作用が顕著になるので、増量のメリットはなく、日本では上限基準の定めはありませんが、400mg/日を目安としている国もあります(食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~)。
いま、自分がウルトラを完走目標にするなら、最初の6〜12時間はカフェイン無しで、そこで疲労が強くなってきたタイミングで200mgを入れ、6時間毎に100mgを追加するのを基本パターンにするでしょうか。
周回のKOUMIなら、デポバッグに寄ったタイミングで使うことにすると思います。経験上、24時間を超えてくると頭が悪くなり、カフェイン入ジェルや錠剤だと、いくつ食べたか分からなくなるので、、、
摂取しすぎはトラブルの元になるため、滞在時間が長い、完走ギリギリランナーでも、トータルで800mgは超えないほうが良いと思います。
カフェインって眠気覚ましじゃないの?
ここまで読んできて、「あれ、カフェインって眠気覚ましじゃないの?」って思った人も多いかもしれません。
眠気と疲労にはつよい相関があり、疲労が高まるほど眠気が強くなる(睡眠圧が高まる)ということが知られています。
疲労は「アデノシン」という物質が貯まることで感じられますが、アデノシンは ATPの再生が追いつかず、分解されることで蓄積します。ずっと動き続けるロングレース後半になるほど、アデノシンは蓄積していきます。
さらに、体内時計が重なりますから、徹夜のあるレースだと、午前2〜5時、つまり夜明け直前が、体内時計と疲労の睡眠圧が最大になるポイントなので、ここがもっとも眠気が強くなります。
このように疲労と睡眠には密接に関係があるため、カフェインでアデノシンをブロックし、疲労を隠すことで、眠気をかなり軽減することができるのです。
次のナショジオの記事は理解の助けになります:
第57回 眠気の正体 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
まとめ
カフェインには疲労耐性を高める働きがあり、ロングレースでは特に有効ですが、ふだんから常用していると、レースまでに抜いておくべき疲労まで感じなくなっているため、カフェイン依存してると思う方は、カフェイン抜きにチャレンジする価値はあります。
ただ、カフェイン抜きをしなくてもパフォーマンスには影響しなかったという研究もあるので、深く依存してない人は、無理に抜く必要もなさそうです。
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