国際トレイルランニング協会(ITRA)が提供するシステムは、ランナー・レース主催者にとってメリットがあると思うので、ここでは賛否についてはいったん置いておき、ITRAが提供している機能について、紹介したいと思います。
アカウント登録が不要なサービス
コースデータの参照
ランナーにとって最大の魅力は、統一されたフォーマットで、コースデータを参照できる機能です。
距離や獲得標高、山岳度合いから算出されたインデックスを利用すれば、じぶんの身の丈にあったレースを探しやすくなります。
特に、フィニッシャー値からは完走可能性を判断できるため、レース選びの大きな手助けになるでしょう。
グレード化には賛否がありますが、レース強度の見当がつかないトレラン初心者や、まだ誰も行ったことがない海外レースを探している方には、利便性が高い機能です。
エントリー可能なレースのカレンダー
主催者から登録された、エントリー可能なレースを、国や地域、開催時期、難易度で絞り込んで、検索することができます。
レースリザルトの参照
自分の結果を参照したり、各レース参加者の順位を確認したりできます。
自分が走ったレースのリザルトは、各レースの主催者が登録してくれているため、個人で登録する必要はありません。
アカウント登録が必要
ここからは、個人情報の管理となるため、アカウントの登録が必要となります。
リザルトの訂正
ITRAに登録されているリザルトが間違っていた場合の訂正は、ランナー自身で行う必要があります。
すこし分かりにくいところですが、ITRAに登録された後はITRAに申告する、と覚えておきましょう。訂正の手順は、以下の記事で紹介しています。
健康情報の登録と管理
治療中の病気や、その治療薬、サプリメントといった健康情報の登録や、健康診断書をアップロードする機能が実装されました。
UTMB2018から使われます。
ゼッケン番号と健康情報がリンクされることによって、緊急時の対応がよりスピーディーになると期待されます。
アンチ・ドーピング管理もできるようになっており、検査対象アスリートの方は、登録が必須となります。
登録された健康情報は、検査・治療にあたる医師しか参照できないようになっています。
個人情報の登録は安全?
ITRAの個人ファイルには、電話番号や緊急連絡先、顔写真、パスポート、傷害保険も登録できるようになっています。
情報漏えいはよく聞く話ですし、海外の機関に情報を預けるなんて、不安も残ります。
ですけど、ぼくらは海外へ、しかも山岳競技に出場するわけです。
個人情報の安全性と、万が一の事態が起きた時のスムーズな対応と、どちらを重視するか、よく考えて登録しましょう。
これは一人ずつの価値観なので正解はありません。
ぼくは登録しました。
有料機能
有料会員になると、各レース完走者の Cortation値を参照できるようになり、ITRAが紹介する傷害保険に加入することもできます。
詳しくは次のページにまとめました。
ITRAで出来ないこと
一方で、ITRAのグレード化では、表現されない部分も数多くあります。
トレイルレースの魅力は、距離や厳しさだけではありません。美しい風景を楽しんでもらうため、特別に開放されたトレイルだったり、地元の方たちによる演出やエイドの盛り上がりなどは、数字に表現されるものではありません。
また、大会会場への交通アクセスの良し悪し、レースに合った宿泊施設の有無も、ITRAのポイントには反映されていません。
トレイルレースも競技のひとつではありますが、システム上のポイントに表されるのは競技性の部分だけに限られていて、ランナーへのサポート、イベントとしての楽しさとは直結しないことを念頭において使用する必要があると思います。
そのため、ITRAによる組織化は、自分たちのスタイルとは馴染まないとして、そのシステムに参加しないことを表明している主催者もあります。
この背景については、ITRA個人会員の日本代表でもあるDogsorCaravanさんによるレポートを御覧ください。
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