Polarから、かなり完成度の高いトレイル向けの時計が発売されました。
引き締まったデザインに、洗練された機能。 おそらく、Polar の 最高傑作。
定価 5万9,800円とかなり攻めた価格設定になっており、
特に、Stravaをメインにしているトレイルランナーに向いてます。
Grit X を要約すると
ベースとなるのは、陸上向けの Polar Vantage V 。
- トレイル向けの機能が充実
- 単体でランニングパワー測定もできる
- Strava と相性がよい
- 24時間のヘルスチェックでリカバリーも確認
- 競合するのは、Fenix 、Suunto 9
順番に見ていきましょう。
Vantage V に、何が追加され、無くなったのか
Vantage Vに、トレイルラン向けの機能を充実させたのが、Grit X 。
Garmin の ForeAthlete に対する、Fenix シリーズのような位置づけ。
トレイル向けの新機能を追加
- HillSpritter ・・・ 坂の登りと下りを自動カウント
- FuelWise・・・ 補給のタイミングを通知
- FuelResource ・・・ 消費したカロリーの内訳を表示
- お天気ウィジェット・・・ 9時間先までを直感的に表示
- 長時間モード・・・ 最大100時間のログ記録モード
- 防水の強化・・・ 水深100mまで
- ルート作成のしやすさ・・・ Komootに対応
削除された機能
- 起立試験
- RecoveryPro
代用となる、Nightly Recharge、Fitness Test は残るため、トップアスリートを除けば影響は少なめ。
外観
ステンレスのベゼル、ポリカ樹脂のバックカバー。
凝縮されたテクノロジーが、引き締まった印象を与えるデザイン。
2020年6月現在、黒、白、モスグリーンの3色があり、黒モデルはベゼルが DLCコート。
フェイスはゴリラガラスでタッチパネル対応、240*240dotの液晶で、コントラストはVantage に比べて 向上。
丸くなったボタンは、グローブでも押しやすく、好感。
タフネスとしては軽量級の64g
競合アウトドアウォッチの Suunto 9 が 81g,Fenix 6 が 80 g と比べ、かなり軽量の64gに加え、MILスペック対応の本格タフネスモデル。
交換可能な22mmベルトに
腕の細い人でも装着しやすい(Vantage V, Suunto 9は腕の細い人にはフィットに苦労したはず)。
一般的な交換ベルトも使えますが、金属製のベルトは GNSS受信感度に影響が出るため、おすすめしません。
アップデートされた光学式HR
Vantage が 赤/緑だったのに対し、赤/橙がメインに。
LEDの輝度とサンプリングレートが上がり、精度の向上が期待できそう。
充電台は、Vantage,Igniteシリーズと互換性あり。
新機能
アップダウンを数える HillSpritter
坂のアップダウンを検知し、要した距離と時間をカウントする機能。
ヒルリピート練習に向く。
後日、レポート追加予定。
補給のタイミングを知らせる FuelWise
ワークアウト中に補給のタイミングを知らせてくれる機能が追加。事前に、メインメニュー内から設定可能。
およその運動時間、運動ゾーン、ジェル1個の重さを入力。 水についてもリマインドできる。
ゾーン3で、1時間半。ジェル1個を20gとした場合、
ジェルは合計で40g、水は合計で0.5〜1リットルが必要と計算されたので、装備の準備がしやすい。
この場合、ワークアウト中に ジェルの補給は2回、水は20分おきと、そのタイミングでリマインドしてくれる。
心拍数ベースでの消費カロリー・水分補給であること、現時点では気象条件は反映されない点は注意。
最長100時間の記録
Vantage V と同じ、最大40時間の高精度記録が標準(光学式HRをON・1秒間隔)。
これを、サンプリングを2分間隔、光学式HROFF、画面表示OFF、に落とすことで、最長100時間までの記録が可能に。
Suunto 9が持つ省電力機能と同じですが、歩きの速度なら使えそうです。
このモードでの精度は、後日にチェック予定。
天気のウィジェット
意外と気に入っているのがこの機能。
気温と9時間先までの天気がアナログ盤上に配置されるため、このさきの天気が直感的に理解しやすい。
消費カロリーの内訳も表示
心拍数ベース。ワークアウト中・後の補給の目安に。
スマホの Polar Flow アプリでは、さらに詳しく、1分あたりの消費カロリーも確認できます。
こうしてみると、中〜高強度のワークアウトは、炭水化物による追加効果が数倍にも及ぶことがわかります。
ルート作成は Komoot が利用可能に
すこし面倒だったルート作成は、ルートラボ的な 外部アプリが利用できるように。
現在、Komootが対応ですが、Strava ルートプランナーも予定されてます。
使い方は、ユーザー設定から Stravaのように外部連携すると、お気に入り(★)にルートが加わります。
時計と同期したあと、アクティビティ開始時に設定(⚙)からルートが選択できます。
Garmin と違い、マップイメージは入りません。Suuntoのように、ターン案内、オフルート通知がメインの使い方です。
Komoot の注意点。
ひとつの都道府県だけ無料で、その他のリージョンロックは有料。
精度
ざっと使ってみた印象。
GNSSの精度は高い
誤動作の減った光学式HR
追従性が高く、時には鋭敏すぎた Vantage の心拍計。
Grit Xでは、意図的に逸脱を抑えられています。
どちらもクセがありますが、精度が低いわけではありません。
Vantage V に限りませんが、次のような誤動作に悩んでる方も多いでしょう。
ジョグでの乱れ
スロージョグなのに、心拍が突然160とか180になってしまうケース。
トレイル下りでの心拍の乱れ
トレイルの下りに入ると、着地衝撃の振動などが加わって、ケイデンスが心拍に重積するケース。
Grit X の場合
Grit Xの場合、異常値が出にくくなり、180超に張り付いたまま、みたいなのは出にくい。
いいように思いますが、インターバルのように変化が激しいと、事情が変わってきます。
平均に引き戻す作用が強すぎて、きれいな形になりにくいのですね。
実際には、ワークアウト全体での各ゾーンの滞在時間はほとんど変わらないのですが、「形」を気にする方は、気になる部分です。
Grit X はアウドドア系ウォッチですから、ウルトラトレイルでのノイズを減らし、異常値が出にくい設定にしたのだと思われます。
光学式心拍計にはクセがあり、皮膚の色、体毛、温度、血流など、さまざまな影響があり、誰にとっても完璧なWHRはないのが実情です。
胸バンド式の心拍計(Bluetooth)は使えるので、レペやインターバルの場合には、こちらを使うのがよいでしょう。
まとめ
かなり完成度の高いタフネス系トレーニングウォッチ
本機は、コンパクトで軽量なタフネスボディに、トレーニングに不可欠な機能をまんべんなく搭載しており、高機能であるにも関わらず、北欧系らしいシンプルで分かりやすい操作体系には好感できます。
心拍、GNSSの精度、バッテリーの保ちもよく、最大限に節電すれば100時間近くの記録も可能です。
競合は Suunto 9、Fenix 6
比べて悩むのは、Suunto 9、Fenix 6 だと思います。
非常に完成度の高い Grit Xの登場により、Suunto 9の優位性は失われるでしょう。
Grit Xも長時間・節電モードを搭載したこと、Polar もフィンランド企業らしいシンプルで洗練されたタフなデザインでフィット感も優秀であること、Polarのトレーニング管理・ヘルスケア管理の機能が優れること、Suunto 9の市場価格が高いことが上げられます。
Garmin ForeAthlete 945 / Fenix 6 は、すでに持っているセンサー(ANT系)、連携したいサービスによります。機能の多くはかぶっているため、すでに持っている方があわてて買い換えるほどではないと思います。
バイクやトライアスロンで センサーを使ってる人、疲労管理は TrainingPeaks を使ってる人は、やはり Garmin の方がワークアウト管理がしやすいのも重要です(Polarの場合、TPの構造化トレーニングは未だ連携できません)。
ストラバ課金勢のトレイルランナーにおすすめ
そのため、Strava を課金するほどメインで使っていて、パワートレーニングにも興味がある、睡眠や自律神経の疲労管理もちゃんと見ていきたい、というトレイルランナーには、初心者からエキスパートまで、これ1台でジョギングから大会まで済ませられるため、現在ではいちばんお薦めしたいウォッチとなります。
Vantage V と共通する機能
ランニングパワー測定
時計内の加速センサにより、重心の動きからパワーを推定する方式。
どういったものかは、Vantage V のリポートを御覧ください。
Stravaの課金ユーザであれば、パワーカーブが利用でき、FTPの確認も簡単です。
トレーニングの管理
トレーニング量の適正を管理するための Training Load Pro、 そして 走力をチェックする Running Index( VDOT の Polar版)も、Grit Xで利用可能。
フィットネステスト(推定VO2max)
安静時に心拍変動を測定することで、現在の VO2maxを推定する仕組み。
時計のほか、アプリやWebでも履歴が確認できます。
Running Index と合わせて、現在の走力を確認するのに役立ちます。
睡眠と回復:Sleep Stage Plus & Nightly Recharge
心拍を24時間測定にし、睡眠中も時計を装着していると、睡眠の状況と疲労の回復を測定。
Garmin にも、Body Battery & Advanced Sleep Monitoring がありますが、Polar の場合、「ヒント」も提示してくれます。
解析内容は、自律神経の状態と、睡眠の状況に分かれます。
自律神経の状態は、心拍変動と呼吸数が、いつもより良いか悪いかで判定されるようです。
この例は、テンポ走の夜で、平均よりも心拍が高く、HRVが低く、呼吸が多いことがわかります。
睡眠は心拍と身体の動きからチェックされ、覚醒ーREMー浅い睡眠ー深い睡眠 の4ステージに分類され、それぞれの継続状況から睡眠の質を分析。
この例だと、中途覚醒はあったものの、入眠後に深い睡眠があり、だんだんREMや浅い睡眠が増えていってるので、まずまずでしょう。
ヒントも提示されます。
測るだけで終わらず、アドバイスがあるのは心強いですね。
解析には最低4時間が必要で、24時間光学測定をONにする必要があります。
外部センサー:BLE対応、ANT+未対応
BLE(BlueTooth)の各社心拍センサー、ケイデンスセンサー、パワーポッドと互換性があります。
一方で、ANT+には未対応なので、バイクやトライアスロンもやる人だと、Garmin が使いやすい状況は続きます。
Stravaと相性がよい
Garminも可能ですが、Polar もなかなか相性がよいです。
Stravaと外部連携していると、登録しているセグメントが、時計にも同期されるようになります。
ワークアウト中の画面にて、表示をめくるボタン(▲ / ▼ )で確認できます。
いずれ、Strava ルートビルダーも対応すると言われているので、ストラバ課金勢には、Polarはかなり使いやすいデバイスになりそうです。
複数デバイス間でのデータ共有
例えば、Ignite を日常使用し、トレイルランのときは、Grit X とできます。
その場合でも、心拍や睡眠の記録や、ワークアウトの情報も相互に同期されます。
Garmin だと Fisio TrueUp に相当する機能。