Garmin JAPANから、待望の ForeAthlete 945 が発表されました。同時に、245 / 245 music も発表。
待ち望んでいた人も多いのではないでしょうか。
見たところ、まったく変化がないように見えます。が、さまざまなアップデートが図られています。
このエントリは、先代 ForeAthlete 935 からの変化を中心にしたレビュー記事となります。
- 最初に結論
- 概要と外観:Fenix 5 Plus の樹脂ケースに見えるが・・
- 見た目はそっくりだが、機能は大きく進化
- GNSSログの精度:まずますの成績
- 海外版との違い・パルスオキシメーターは機能せず
- なぜ Fenix ではなく Foreathlete が人気なのか
- ForeAthlete 245 / 245 music の位置付けは
- まとめ
最初に結論
ぼくの場合は、まったく ForeAthlete 935 を使わなくなりました。多少、デイリーモードでの電池の減りは速いですが、ワークアウト中は 935 よりも 1〜2%も省エネです。
また、新機能のBody Battery は 、1日を通してストレスの傾向を知ることができ、不要だと思ってたマップ機能はロスト時にエスケープするのに便利です。
GNSS精度も大きく劣ることは無い上に、サイズや操作体系が全く同じ。
過去のANT+ や BLE のセンサー類も問題なく接続できているため、まったくストレス無く乗り換えることができます。
これから買うなら、高速CPU+大容量メモリとなり、製品寿命の長い245/945はおすすめできる機種です。
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概要と外観:Fenix 5 Plus の樹脂ケースに見えるが・・
ForeAthlete 245 / 245music は 2019年 5月16日の発売、945 は 6月6日に発売となりました。
ForeAthlete 945 は マルチスポーツモデル(バイクやトライアスロン、ウルトラトレイルでも使いやすい)という位置付け。
先代の 935 と そっくりで、一見すると、47mm版(SでもXでもない)の Fenix 5 Plus を樹脂ボディに収めただけのように見えます。
重量もほとんど変わらず(保護フィルム装着済)。
分かりにくいですね、水色のベルトが945、黄色い方が935です。
ベルトは 935互換で、QuickFit 。充電用ケーブルも流用できます。
光学式心拍計が更新されたことで、わずかに厚みが出ています。
光学式の凸部が 0.7mm ほど高くなり、密着感は強めに。 バンドは緩めでもズレにくくなってます。
チェックしていくと、細かな違いも。
まず、ケースサイズは どちらも 47.0mm 、液晶は 30.4mm の 240×240ピクセル構成で同じ。
ゴリラガラスDXの採用もありコントラストは上昇し、カラー液晶にも関わらず、太陽光下でかなり見やすい。
ベゼル内径(画面を囲む外周部)は、935 よりも 約0.5mm 小さい 39.5mm。
そのため、画面保護フィルムは、935 ジャストサイズのものだと密着しませんので、流用にはご注意ください。
以下の945専用品は装着できました。2枚入りでオトク。
Fenix 5 plus の樹脂ボディ版に見えますが、中身はかなり変わっているようです。
見た目はそっくりだが、機能は大きく進化
935からの進化は大きく4つ。
プロセッサ変更による省電力化、音楽再生やNFC決済、道路や山岳地図の追加、光学式心拍ユニットの更新、より詳細なトレーニング効果の分析は、1年前に発売された Fenix 5X Plus や、高級機種のMARQ をカバーするもの。
とくに新型の心拍ユニットと山岳地図は、5X や MARQ といった 52mm の大型機種でのみ提供されていた機能であり、47mm の本機に搭載されるのははじめてのこと。
順番に行きましょう。
SONY製プロセッサへの変更で大幅な省電力化に成功。処理速度も向上。
いちばん大きな変化は、MARQ に続き、SONY CXD 5602 が採用されたこと。
省電力化にも関わらず、処理性能は +40~80% の向上。
カタログ上、GPSモード(高精度モード)が、24時間 → 36時間と大幅に延長され、UltraTrak(長時間モード)は 最長60時間に。
ワークアウトでの消費は 1~2% 少なめ
2週間ほど、様々なワークアウトで測定してみました。
光学式HRをON・GPSモードで、1時間あたりの消費率は 3%〜5% と、同条件の935 よりも 1〜2%ほど省エネ。
よほど悪条件でもないかぎり、最低でも25時間,平均して30時間ぐらいは行けそうです。
Bluetooth 外部センサー(Tempe、Stryd)などを併用しても、+1%増えるかどうか。
かなり消費は抑えられている印象。
日常生活モードでの消費は多め・・?
一方、ライフログ機能での消費は、935よりも多めで、次に紹介する BodyBattery 機能による影響が大きいと思われます。
とはいっても、1回の満充電で1週間は保ちます(毎日1時間のワークアウト+24時間ライフログ)。
なお、バッテリーをもたせるコツは、次の記事にまとめてあります。
光学式心拍計の更新 / Body Battery の追加
光学式心拍計も更新され、Fenix 5 Plus よりも精度の向上と安定が図られました。
ライフログ機の Vivosmart 4、高級機のMARQ に先行して搭載された 2019 年登場の新型(Elavate Ver.3 と呼ばれる )で、血中飽和酸素(SpO2)測定も可能なユニットです(ただし日本では機能削除;後述)。
そのため Vivosmart 4 や MARQ と同じく、身体のエネルギーを測定できる Body Battery 機能が追加に。
BodyBattery については、別ページで詳しく紹介しています。
音楽再生、NFC決済
音楽再生は、先行発売されている 645 Music 、Fenix 5+ 、MARQ に搭載されている機能と同じ。
現時点では、AWA、LINE Music、Spotify 定額配信に対応。
Garmin ForeAthlete 645 MUSIC 購入レポート - メチロンのトレラン日記
NFC決済は、UFJ VISAデビット のみの対応となり、他の決済ベンダーの参入が望まれます。
以下は、先行発売されている645/MUSICでのレポートです。
Garmin ForeAthlete 645 MUSIC 購入レポート - メチロンのトレラン日記
ちなみに、腕から時計を外すとNFC決済が自動的にOFFにされるセンサーが入っているのですが、同様に光学式心拍もすぐにOFFになり、省エネにつながっています。
プリインストール地図は使える・迷い時のエスケープに有効
地図はリージョン毎に異なるもので、日本版には、日本詳細道路地図 (City Navigator Plus)と登山地形図(TOPO10MPlus V4) の2つがプリインストールされています。
今まで同様に、事前にいれたルートに従ってナビをする機能に、ルート探索が加わりました。Edgeシリーズ のような サイコン(自転車用のアシストGNSS機器)と同様の機能を持ったわけです。
この機能のすごいところは、道路地図と登山地形図をシームレスに探索できるところで、試しに市街地から山頂までをサーチしてみると、
このように、道路から登山道まで、最短ルートを一発で表示します。所要時間は、長くても2−3分で、あとは通常のナビ機能のように使えます。
ウェイポイント(交差点や分岐)に来たとき、ルートを外れたときは、サウンドとバイブで通知できるため、ランニングの集中力が途切れずにすむメリットもあります。
このルート探索機能はオフライン(時計単体)で使用できるため、たとえば天候急変時や迷った時のように、急いで最寄りの街や駅までエスケープしたいとき、スマホのバッテリーを温存しなければならないシチュエーションで、とても役立つと思われます。
あまり人の入らない山域で試走を行うトレイルランナーであれば、この2つの地図が入っているという点だけでも、購入を検討する価値があります。
欠点を上げるとすれば、ボタンでの地図操作が面倒なことと、ランニングを超える速度では地図の追従が遅く、サイコンの代わりにはならないこと、ぐらいです。
緊急時にしか使わない機能かもしれませんが、ふだんから使い慣れておくのをおすすめします。
フィットネス測定に「暑熱順化」「高所順応」が追加
今までも、有酸素/無酸素 のトレーニング効果や、VO2max の測定、フィットネス状態が表示されていましたが、それらの精度向上に加え、あたらしいトレーニング効果が加わりました。
「暑熱順化」と「高所順応」です。
暑い中でどれだけ運動したか・・・暑熱順化
暑熱順化は、暑い中でのワークアウトで、どれだけ熱疲労を蓄積したかを示します。
時計では、トレーニングステータスウィジェット>暑熱順応 から、
太陽のマークが、暑熱順応の印です。
スマホ版では、詳細>パフォーマンス統計>トレーニングステータス から
Web版では、レポート>トレーニングステータス から(一番下)に
それぞれ表示され、グラフで見やすいのは、Web版。
22℃をこえる環境で、どれだけのワークアウトをしたかで決まるようですが、詳細なアルゴリズムは分かりません。
温度と湿度は、Garmin Connect からの気象情報から得るため、ワークアウトの前後で同期しておく必要があり、現在のところ手動で変更する方法はありません。
そのため、ジムや体育館などの屋内練習では、不正確になる可能性があります。
高いところでどれだけ過ごしたか・・・高所順応
高所順応は、内蔵の気圧センサーを用い、およそ 800m を超える高度での滞在時間(24時間装着)と、ワークアウトから順応の程度を示します。
これらも、トレーニングステータス項目で確認できます。
やはり、ワークアウト時の気象データを用いるため、そのエリアで、一定時間内に Garmin Connect アプリと同期する必要があります。
活用するためには、スマホを持ち歩く必要がある、ってことですね。
GNSSログの精度:まずますの成績
ログの比較。
最初に。ここ数年内に発売された時計は精度が高く、各社どれを選んでも大差はありません。
現在は、できるだけ精度を下げないようにしつつ、バッテリーの持続をより長くする、という競争フェーズに入っています。
その上で、トレイルランナーが特徴的な挙動をピックアップして紹介します。
40kmのトレイルレース
レースでの実測例から。滋賀の Fairy Trail 40k 。
トレイル率が高く、尾根を攻める厳し目のコース。
同じ Sony製 GNSS を搭載している2機種の比較で、右腕に945(青)、左腕に Vantage-V(橙)を装着し、反時計回りに1周しています。
拡大すると、外周側に945が、内周側に Vantage-Vが位置するのが分かるでしょうか。装着する腕の左右の違い、が現れるほど、最近の精度は高いです。
ただ、サンプルレートは最高で1秒なので、キロ3分台とかで直角に曲がると、コーナーをカットしたりする現象は見られます。
電波状況の悪い渓谷部
電波状況が著しく悪い、渓谷部での挙動を見てみます。
精度が高い Epson と MediaTek の2機種と、省電力型 Sony の2機種の比較。
ForeAthlete 945(Sony)
Vantege-V(Sony)
ForeAthlete 935(Mediatek)
MZ-500(Epson)
MZ-500(Epson)と 935(MediaTek)は、真っ直ぐな線を引くのに対し、Sony の2機種は共通して「腕振り」の影響とみられるノコギリ型が見られます。
これは、電波状況が悪化したとき、補足する衛星を増やす方向で精度を上げるアプローチと、受信状況は変えずに加速度センサーで補正し省エネを図るアプローチの違いによると思われます。
ちなみにもっとも広がっている下部でも10m以下の開きでしかなく、悪条件でもこのレベルなら上出来と感じます。
ロードでの挙動
ハイスピードで曲がった場合の挙動をロードで再確認してみると、
キロ4分半で3周したところ、最もブレが少ないのは 935(緑)。
945 と Vantage-V の2機種も、数メートルほど建物の影響が見られるものの、コーナーカットは見られていません。
この精度で30時間いければ上出来ではないでしょうか。
ただ、高層ビルの多い都市型マラソンだと、影響がでるかもしれません。
リアルタイムのペース表示には注意が必要
建物の影響でログが乱れる例を示しましたが、時計のペース表示を見ながら走る場合には、この点に注意が必要です。
これはフットポッドの併用で回避が可能です。
仮に建物の影響がないとしても、GNSSウォッチのペース表示は1秒更新。
ペースが上がる、急な加減速をする、複雑な動きをするほど、ペース表示の信頼性は下がります(中学生でも速い子なら 1秒に8mぐらい進みますし、サブスリーなら1秒間に4m進みます)。
時計を見ながらペース管理をしたい場合には、フットポッドの併用がおすすめです。歩幅から計算されるため、かなり正確です。
Garmin 純正では SDM4が、
また、Stryd 等の外部パワーセンサーも、フットポッドに対応しています。
海外版との違い・パルスオキシメーターは機能せず
残念なことに、Fenix 5X Plus でも そうであったように、血中飽和酸素を測定するハードウェアは搭載しているにも関わらず、医療機器に該当するため、日本版では動きません(日本支社から回答を頂きました)。
SpO2、海外レビュアーの声は
それなら海外版を買おうかな、って悩むと思いますが、ここで 海外レビュアーさんの報告を紹介しておきます。
計測レビューで有名な、fellrnr.com さんによれば、
fenix 5X plus のパルスオキシメーターに期待しすぎたかも。
パルスオキシメーターは読み取り時間がかかるものだが、腕を安静にしてても読み取りに苦労した
よく値がズレる、97%ぐらいなのに、80%中盤ぐらいを示すことも
走ってる最中は、まず測れない
出典:Garmin Fenix 5X Plus Review - Fellrnr.com, Running tips
また、Aviation Consumer に投稿された、Larry Anglisanoさんの航空用モデル(Garmin D2 Delta PX)のレビューでは、
スポーツパイロットとしては、心拍や血中飽和酸素がひとつのデバイスで測れたら便利だよね
D2 Delta PX は 完璧じゃないけどそれに近いものだ。
ただ、SpO2 は 耳たぶや指先で測るのが正確なので、手首で測るのには限界がある。
腕を安静にしなきゃいけないんだけど、飛行機の操縦中に30秒も静止させるのはさすがに難しいね。
ちょっと動かしてもだめだし、指先型ほどの精度がでない。
指先型と比べてみたけど、同じ時もあるし、4%ぐらいは外れることもある。
このあたりをよく理解して使う必要があるね。
出典:Garmin's Wrist Pulse Ox: Reduced Accuracy - Aviation Consumer Article
ほかの機種のレビューではあるものの、まだ改良の余地はありそうです。
パルスオキシメーター搭載にこだわる理由は
血中飽和酸素は、心臓から届くフレッシュな動脈血に含まれる酸素を測りたいので、末梢の指先や耳たぶで測るのがベストとされています。
技術がそこまで追いついていないのに、手首の測定が採用されたのには、多少の精度は犠牲にしても、アイテムを減らしたいというパイロットや極地アスリートのニーズに応えるためでしょう。
将来的にまったく期待が持てないわけではなく、Garmin Connect のページでは、すでに日本語対応がされています。
現時点では、多額の費用と時間ををかけてまで、厳しい日本の医療機器の承認を受けるのはまだ早い、という判断があったのかもしれません。
今回、FR245/945 に採用され、多くのユーザが使うことで、今後の品質向上が期待されます。
先の fellrnr さんは、「現時点では、CMS-50DLのような激安パルスオキシメーターの方が早いし、精度がいいよ」とコメントしています。
よほど携行品を減らしたいとか、パルスオキシメーターを持ってないから欲しい、という理由でもないかぎり、PulseOx に こだわる理由はない気がします。
指先型を探すときには、高所に対応したものを選んでください。
なぜ Fenix ではなく Foreathlete が人気なのか
ForeAthlete 945 が待望された理由のひとつに、頑丈なのに軽量でコンパクトな樹脂ケースがあります。
そのメリットは、
軽い
電波の感度がよい
価格も安め
245 は わずか 38.5g、 945 でも 50g と、クラス最軽量の軽さ。
電波の感度がよいのも樹脂ケースの特長で、同じモジュールを使っていても、Fenix シリーズは、GNSS感度の低下や、各種センサーの接続不良に悩まされやすい報告があります(この金属ケースによる電波遮蔽の弊害は、Polar Vantage V と M でもみられる現象)。
そのため、外部センサーをいくつも必要とするバイクやトライアスリートを中心に、音飛びせずにヘッドホンで音楽を聞きたい人、Stryd や RunScribe のようなランニングパワーセンサーを使いたい人たちが、『金属ケースではない』エンデュランスモデルを求めていました。
それが、ForeAthlete(ForeRunner)945、ということになります。
ForeAthlete 245 / 245 music の位置付けは
マルチスポーツモデルである 945 は、トライアスロンのように スイム→バイク→ラン と、異なるアクティビティの連続でも使いやすいのに対し、245は ロードランニング専用の位置づけ。
ハード的にも、NFC(タッチPay)や気圧計を持たないこと、バッテリー容量が少なめという違いがあります。 少なめといっても、GPSモード(高精度)+光学式心拍で、最長22時間と、先代の935に並ぶ持続時間をもち、ウルトラマラソンにも対応できるレベル。
トレイルランナーは、気圧高度計を持たない点に注意してください。気圧計は『高度』を測定するのに用いるため、高度の精度が低くなります。
また、『ランニングパワー』にも気圧計が必須のため、HRM-4RUN や Rd-Pod を使用しても、ランニングパワーは測定することができません(Stryd や RunScribe を用いれば可能)。
FTPや乳酸閾値、スイムのメトリックにも非対応。
つまり、マルチスポーツはやらず、高低差のないロードやトラックだけのランナーに、軽量で安価なモデルが、245 という位置づけです。
まとめ
Suunto、Polar に続き、ついに Garmin も SONY となったことで、GNSS精度やバッテリー持続は大きな差がつかない時代です。
またしても、PulseOx の見送りに、がっかりした方も多いでしょうが、現時点では専用のパルスオキシメーターの代わりにはなりません。
それよりも、『暑熱順化』『高所順応』といった、トレイルランナーやトライアスリートにとって実用的な項目が増えたのは評価できます。
現時点では、『日本登山地図』と国内サポートを捨ててまで、945海外モデルの個人輸入する理由は大きくありません。
入手後、精度についてのチェックや、新機能についてレビューする予定です。
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