椅子に浅く腰掛け、背中を丸く、ヒジを付いたりしている。
要するに姿勢が悪い。骨盤が後傾してるとか、地面の反発が貰えてないとか言われる。
あと少しでサブフォー、サブスリーに届かない。でもフォームの本を読んでも分からない。
そんな猫背の人が、姿勢を克服する過程を残した記事です。
この記事を読む意味がある人
自転車に乗れるようになると、今度は転び方が分からなくなるように、上手く走れるようになるにつれ、猫背で走れなかったときの事が思い出せなくなるに違いない。
そう思って、まだ実感があるうちに残しておきます。
そうじゃない人が読んでも、さっぱり意味が分からないと思います。
いわゆる猫背の人で、
地面の反発をもらう
腰を入れる
骨盤の前傾・後傾
という意味がさっぱり分からず、
普段の姿勢は、
椅子に浅く座って尻の後ろに空間があり背中を丸めている
仰向けに寝たとき、腰のあたりに空間ができる
痩せてるのに腹筋が浮かばない(腹がたるんでいる)
という感じで、
トレーニング時の特徴は、
回転を高めるのは得意だが、ストライドが狭く、どうしても広がらない
追い込むと「心肺よりも脚が先に終わる」
じゃないかと思います。
これは、支持脚よりも身体が前に出られず、脚の筋肉の曲げ伸ばしで推進するため、浅いスクワットを繰り返しているようなもの。
この状態でトレーニングを積んでも、脚が太くなり、心肺は鍛えられるけど、脚が先に終わるのでハイペースで長時間走れないし、ストライドも広がらない。
ポール(ストック)を使う人なら分かりやすいが、腕の重さを預けて前進すると、その荷重でポールが後ろに押され、地面から反発が得られて推進力が得られる。
それと同じように、ヒザが伸びていて、上半身が接地している脚より前にいくと、体重で脚が後ろに押され、地面の反発で推進力が得られる。
これができるためには、力を受ける上半身という箱が固められている必要があり、猫背の人は、コンニャクというか、潰れたティッシュの箱みたいな折り目から力を逃してしまい、またバランスの悪さをヒザで吸収してしまうため、反発力を活かすことができず、末梢の筋力に頼りがちとなる。
つまり、上半身の剛性を高める、骨盤から上を固められるようになることが、地面からの反発を生かした走りのスタートラインということになる。
実践
「体幹だけを意識」して「手足はまったく考えない」で走ることが心がけます。
脳には「マインドタイム」というタイムラグが0.3〜0.5秒あるので、ハイペースになると意識で手足はついてきません。
手足は「無意識の反射」に任せ、ヘソ周りを中心とした、体幹だけにフォーカスするのが、最後まで共通する課題です。
体幹を使えるまでには、どうしても時間と距離がかかる。
反発力を感じるためには、ある程度のハイペースが必要だけど、そうすると足や膝下の故障が起きやすくなるから、ハイペースを避けつつ、体幹の使い方を練習したい。
なので、『反発力をドーピング』することをおすすめしたい。
ぼくは、ペガサス36を使ってます。
ペガサスのいいところは、
耐久性が高く長持ちする
ゆっくりでも必要な反発が得られる
フォームチェックしやすい
という点で、ジョグで距離を踏むのに向いてます。
真下で着地できていると、ミッド〜フォアフット感とともに十分な反発がえられ、変な着地をするとローリングして正しい位置を教えられます。
キロ7〜4半ぐらいで、まったく脚を意識せずに、体幹だけで走る感覚を掴むにはピッタリのシューズです。
第1段階
<目標>
- 体幹を固める
- 脚が前に帰ってくる感覚をつかむ
痩せてるのに腹筋が見えないのは、姿勢の悪さ。
鏡の前で、胸を反らし、お腹を凹ませてみよう。
お腹を凹ませるといっても、お尻を突き出すのではなく、『おへそを背骨にくっつける』つもりで。
そうすると、シックスパックが現れ、両側に腹斜筋が浮き上がるはず。
肋骨の下が広がると思いますが、腹筋と腹斜筋の力で、左右から巻き込むように閉じて。
すると、腸腰筋の上に、胸郭が座っている感覚が得られます。
これが、猫背でない正しい姿勢。この状態を覚えておく。
たぶん、超くるしいと思うが、大丈夫。
この辺りの体幹の筋肉は、とても持久力があるので、苦しいが、長時間つづけられる。
意識の問題なので、やり続ければずっと出来るようになります。要は慣れ。
その姿勢を覚えたら、次にジョギングします。
キロ6でもキロ7でもいいから、いつものように走り始めます。
ペースが乗ってきたところで、鏡の前で練習した『腹筋が見える姿勢』をします。
すると、接地してる脚が後ろにいったあと、宙に浮いたら、脚が自然に前に帰ってくるようになります。
脚の筋肉はまったく意識してないのに、骨盤やお腹の筋肉を、姿勢を維持しようと固めるだけで、脚が自然に前に帰ってくる。
このジョギングを、体幹の姿勢が維持できるかぎり、続ける。
これが出来るようになるのに、1週間もかかりません。
ここが、第1段階。
第2段階
<目標>
- 体幹だけ意識し、手足は考えない
- ヘソ下あたりが引っ張られる感覚
60分とか90分、体幹を維持できるようになった次は。
背骨とおヘソをくっつけるイメージのまま、モーターボートで引っ張られるジェットスキーみたいに、へそ下の高さで巻かれたベルトで、前から引っ張られる感覚で走ります。
そのとき、おヘソだけが持っていかれないよう、上半身の力をつかって、肩とかも遅れないようにこらえるのがポイント。
このとき、体幹の維持だけに意識を集中すると、手足は力みがぬけて、リラックスした状態になる。
「脳はいちどに2つのことに集中できない」特性があるため、体幹だけに意識を集中することで、手足を無意識による支配にすることができます。
すると、足は身体の重心の真下あたりに着地するようになってくるため、ペガサスのローリング感はなく、足を地面においてるような感覚に変わります。
体幹による脚が前に引き戻される動作にペガサスの反発が加わることで、脚は脱力したまま、自然に回されるように感じられます。
これを続けていると、いままで固着していた尻〜太もも〜ふくらはぎの筋肉が、マッサージされるように緩み始め、揉み返しのような筋肉痛がでることもあります。
第3段階
<目標>
- ペースを上げてみる
- 支持脚を骨盤が乗り越えていく感覚
- 足を重心の下に落とす感覚
安定して出来るようになったら、少しペースを上げてみます。
ペガサスは、キロ5分半〜4分半が得意なシューズなので、前述のフォームを意識したまま、サブ3.5、つまりキロ5ぐらいまで上げます。
すると、支持脚(地面に着地した脚)が垂直になり、体幹が脚より前にいくと、体重が落下する重力で足が後ろに送られるとともに、反力として推進力が得られるはずです。
これが「地面から反発力をもらう」というやつで、体幹を意識したまま、左右交互にこれを繰り返します。
このように「支持脚が倒れて骨盤が前に押される」ようになってくると、自然にストライドが広がるようになってきます。
しかし、さらにペースを上げていくと、反発と引き戻しにより前に振り上げられた足(遊脚)が、つぎの接地に間に合わなくなってきます。
なので、間に合わなくなってきたら、「重心の真下に足を落としていく」ようにする。
筋肉を使う意識があるとすれば、この「足を真下に落とす」感覚ぐらいです(踏みつけるように勢いよくはヤリ過ぎ)。
この動きで、5段階ゾーンの、Zone 2〜3弱 ぐらいの練習を積むと効果的と感じました。
ふだんからの姿勢が大切
この辺りまでくると、走ってるときだけでなく、ふだんから立ってる時に、身体の前面、太もも上部〜股関節前面〜腹がしっかり伸びておらず、中腰のように曲がってることが多いことに気づくと思います。
これは椅子に腰掛けてばかりの生活により、股関節の前面が萎縮した状態に固着しちゃってるためです。
ブリッジをやろうとしても、M字型とかになっちゃって、アーチにならんのじゃないでしょうか。
この部位のストレッチは意識してやるとともに、立ってるときも、背中が丸く腰と膝が曲がったたるんだ姿勢にならないよう、走ってるときと同じように体幹を維持する練習しましょう。
あと、地面に落ちたものとかを拾う時とか、ヘソのあたりで折り曲げてしまい、膝を曲げないのは厳禁です。かならず膝と股関節を折りたたんでしゃがみ、体幹に折りグセをつけないよう注意しましょう。
第4段階
支持脚を骨盤が乗り越えるようになると、次は”骨盤が左右交互に前に出ている”かのような感覚がでてきます。
実際は骨盤が動いてるんではなく、動いてるのは股関節です。
支持脚が垂直から傾き始め、股関節で骨盤が前に押されると同時に、固めてる上半身の前面、おヘソの両脇が、胸から骨盤までがまるで板バネのようになっていて、股関節が押してくる力がその板バネに押し込まれ、上半身が前に押し出されます。
この感覚のとき、同時に「お尻の筋肉」を収縮させることで、股関節で前に押しだす駆動力が得られます。これは、トレイルの上りで重要な力の使い方じゃないかと思ってます。
ただ、このお尻も意識しすぎると、かえって身体がぎこちなくなるんで、あくまで体幹だけを意識してたほうがよいです。
ここまでくると、やっと「みやすのんき さん」が言ってることが分かるようになってきます。
第5段階
ここまでで、上半身(といってもヘソ周り・丹田)の意識をもち、支持脚に乗り込むことで筋力を使わずともペースを維持できるようになってると思います。
ここからは、股関節の内旋・外旋の意識が入ってきます。
股関節の内旋・外旋は、体幹を固める・緩めるのと密接に関わりがあり、上半身という箱のねじれ剛性で反発力を蓄えます。
これは肩関節もおなじで、例えば『虎ひしぎ』という古武道の技は、腕の内旋・外旋によって、胸郭がしっかり固められるようにです。
内旋や外旋の動きと体幹のバランスについては、ストレッチポールと、LPN公式のテキストがおすすめです。
テキスト通りにやると、肩関節、股関節、そして胸郭と脊柱のバランスがとれ、身体の動きが連動しやすくなります。
ここから先は、詳しく書くにはぼくにはまだ無理なので、ちょうど為末大さんが、そのことを記事にされてるので、そちらをご参照ください。
短距離選手の技術練習は全てこの乗り込む瞬間の精度を高めることに向かっていると言っても言い過ぎではない。https://t.co/naOq9aeBcV https://t.co/naOq9aeBcV短距離選手の技術練習はこの乗り込む瞬間の精度を高めることに向かっていると言っても言い過ぎではない。
— Dai Tamesue (為末大) (@daijapan) September 9, 2019
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