Strava App の 獲得標高と GNSSウォッチでは、どちらの獲得標高が正しいのか
Strava で、おんたけ(ontake 100)のリザルトを見ていて、面白いことに気づきました。
スマホ計測(Strava App等) と、GNSSウォッチ計測では、獲得標高が大きく異なるのです。
どっちが正しいのか。どうしてなのか、考えてみました。
きっかけ
おんたけのデータ、14時間以内で完走した人をみてると、
— methylone (@methylone) 2019年7月14日
GPSウォッチ系 102km +2,400m ぐらい
スマホ系 103km +3,700m ぐらい
と、スマホアプリのほうが、獲得標高が高くでている・・・(Strava 調べ
Strava上で、14時間で100k を完走された方の 例を上げると、
こんな感じで、世代・メーカーを問わず、『気圧高度計をもつGNSSウォッチ』での計測が、2,400m台がほとんどであるのに対し、Strava Appを含むスマホ計測だと、3,700m台になっています。
どっちが正しいのでしょうか?
その理由
スマホ計測(Strava App)は、Topo(地形図)に基づき、独自のアルゴリズムで獲得標高を計算しています。
何が問題かというと、地形図の標高単位は10m単位であるため、実際のコースと地図にズレがあると、簡単に10m単位で獲得標高が加算されてしまうことです。
青い線が、実際のコースだとします。雑コラですみません。 これだと、ほんの100mも行かないうちに、①②で 20mD+、③④で20mD- になってしまいます。
実際に、おんたけの事前想定マップ(当日に折り返し部が修正になっています)で、GNSSウォッチによる計測データと、それを地形図から再取得したものを比べると、
時計から得られた高低差と、そのルートを地形図から高度を再取得して得られた高低差。のちがい。 pic.twitter.com/obiQY7quaD
— methylone (@methylone) 2019年7月14日
こんな感じで、地形図から再取得したデータのほうが、獲得標高が大きくなります。
そーそー、iSRの開発者も言ってました。Stravaがマップデータから補正入れてくるって。でもなんか一部の外部アプリはその補正がかからないらしい。なので同じく走った人でもGarminで計測したのか他で計測したのかで累積が変わるみたい。やめて欲しい。
— キ ョ ウ ヘ イ (@kyouhei) 2019年7月14日
つまり、Strava Appは、地形図に引いたルートから、獲得標高を算出しているところが、GNSSウォッチと違います。
そのルートを大勢が通ることで、よりデータが集まると正確さが増していく、ビッグデータのシステムになっているのですが、それだと以前と比較がやりにくくなってしまいます。
どこに注意が必要か
なので、どっちが正しいか、というのではないのですが、ITRAでは 『気圧高度補正のGNSSでの実測』が推奨しています。
そもそも、地図が実際のルートどおりになっているとは限らず、正しく高低差が積算されない可能性があるためです。
地図が正しくない、なんてことあるの?って思いますが、実際にずれていて、事故まで起きてる極端なケースもあります。
国土地理院の地図が間違っているとの指摘。
— DAN杉本 (@DANkashmir3d) 2019年7月13日
掘削機材 トンネル突き破り事故 図面にトンネル記載なし 長崎 | NHKニュース https://t.co/km4zjPGYwn
地図と実地の乖離を防ぐため、ITRA では、『GNSS機器を持って大会コースを歩くこと』を推奨しています。
また、最近のGNSSウォッチは精度が高まっているとはいえ、崖や急峻な地形によって、電波が弱まったり、乱反射した場合には、何十メートルもズレることもあります。
そのため、(大会主催者用のデータは)腕時計ではなく、マルチパス反射などの影響を避けるために、専用のアンテナが望ましいとしています。
たとえばこんなのです
グランドプレーンと持ち手を取り付けた即席のGNSS装置です pic.twitter.com/IyyNfhhsCf
— ビール飲みたいbot (@iwahage) 2019年7月10日
これを持ってトレイルを歩くのが推奨されてます。
ちなみに、宮西さん(@iwahage)さんが、これを使った計測の講習会をやるそうです。
8月の講習会で詳しいやりかた説明するよ。みんなきてね。https://t.co/jXeoJsy1Fi https://t.co/V368e9mHOU
— ビール飲みたいbot (@iwahage) 2019年7月10日
ただ、立ち入り規制があって大会当日じゃないと入れない区間とか、初回の大会であるとか、100マイルを通して計測するのは難しいとかもあるので、図上計測が不可、というわけではなく、あくまでもITRAが実測が望ましい、としているだけです。
とりあえず、ランナーが気にする話じゃないんですが、ITRAポイントを申請する大会運営側は、スマホ(Strava Appなど) で計測した ログには注意したほうがいいかもしれません(使う大会なんて無いと思いますが)。
最後に
Garmin や Suunto、Epson 等の GNSSウォッチデータを、Strava に アップしても、補正されることはありません。
一方、iSR だと、勝手に Strava補正がかかってしまい、素の獲得標高を表示することはできないようです。
ちなみにこれ、iSRの元データ、Stravaの補正後、一緒に走ってたGarminの仲間。補正全くいらないじゃん、て感じでStravaの補正アルゴリズム無駄。CC:@methylone pic.twitter.com/Hba7YKKTHW
— キ ョ ウ ヘ イ (@kyouhei) 2019年7月14日
また、Strava も、現時点では、気圧高度計補正のほうが精度が高いことを認めているようです。
Strava も 気圧高度補正のGNSSがよりよいと考えてるみたいですね🤔
— methylone (@methylone) 2019年7月14日
We generally consider the data from barometric altimeters to be of higher quality than the data derived from GPS signals and prefer that when processing activitieshttps://t.co/3TTAofKDcf https://t.co/XyoCW5sd85
ただ、どのデバイスで 補正をかけるか掛けないかは、Strava が 勝手に決めていることなので、ユーザが選ぶことは、現時点ではできません。
というわけで、
結論としてトレイルの獲得標高は、実測が可能であれば『気圧高度計補正のあるGNSS』をベースに考えたほうが、ITRAポイント上では、自然ではないかと思います。
大会主催者さんには、宮西さんの方法が、より精度の高い計測手法としておすすめできます。
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